過少にしか報告されていないマレック病
コマーシャル養鶏におけるマレック病(MD)について、米国の著名な専門家は次のように述べている。「鶏群の評価を維持しようとする養鶏企業の思惑のため、MDは世界的に過少報告されている」。
米国農務省(USDA)鳥類疾病及び腫瘍研究所のジョン・ダン博士によると、当局が行った最近の世界的サーベイでは、MD発生のうち40%はそれぞれの国で報告されていないか、診断されていないとのことである。
最近バルセロナで開催されたメリアル主催の世界鳥類フォーラムの中で、ダン博士は「昨年は、ポーランド、南アフリカとマレーシアからの3つの調査結果のみが養鶏場におけるMD発生の常時診断を実施しているとの報告が挙がっている」と述べている。 MDは、鶏群の100%死亡率をもたらすこともあるヘルペス・ウイルス感染症であり七面鳥に影響を及ぼすこともある。
ダン博士によると、「昨年1年間にUSDAが調査した養鶏場及びインテグレーターのうち半数において、MDが重要な経済的損失の原因である」とのことである。またダン博士は「これらのケースは公表されないことが多い。なぜならMDの予防は最適な衛生管理を必要とするからである。実際、多くのケースで関係する養鶏企業の評判を落とさないよう、報告しないのである」と報告した。
MD感染症による免疫抑制の影響はさらに評価が困難である。ワクチンではMDの感染及び伝播を防ぐことは容易ではないため、鶏舎はMDに汚染されているのが常態と考えられる。MDウイルスに曝露された後2週間程度でフェザーダストにより伝播し、約5週目にはピークとなる。感染したフェザーダストで、MDウイルスは数ヶ月間、あるいは通常の温度では数年間感染力を保持する。
ダン博士は、「継続的な伝播、ウイルスの長期生存及び大規模飼養はすべて鶏舎内ウイルス量を増大させる好条件となっている。その結果、鶏群の導入では常にMDを警戒し、ワクチン接種をしなければならなくなっている」と指摘する。
MDが過少にしか報告されないもう一つの要因は、この病気が届け出伝染病ではない★という事実である。その上、MDワクチン接種により損失が少なく済むことが一般的に認知されており、常にワクチン接種が行われる。MDは、育成会社と孵化場、又は孵化場とワクチンメーカーの経営上の都合がリンクする場合があり、そのようなケースでは公表されないことが多い。
発生は繰り返される傾向に
ダン博士はまた、以下のように述べている。
「養鶏産業が直面する主な懸案事項は、発生を繰り返したMDは、より高い病原性を獲得する傾向にある、ということだ。 MDウイルスが中等毒から強い病原性に変異した最初の波は1950年代に起こった。これは密飼い養鶏場にMDウイルスが伝播したことが原因である。感受性鶏を大規模に、継続的に飼養し、鶏舎内の清浄化に失敗したことが確実にMDウイルス変異の主要な原因となっている。」
「これを受け、有効なMDワクチンが登場した。しかしMDワクチンは病原性ウイルスを殺傷する免疫を産生しないため、ワクチンウイルスと野外ウイルスの両方がワクチン接種鶏群の間で排出されることとなった。」
「病原性が強くなるたびに、新しいワクチンを導入しMDコントロールする方法は将来続かない。それ故、ウイルスの病原性の上昇を遅らせ、既存のワクチンの効果を改善するための調査が新しい戦略として重要である。」
【訳者注】
★:日本国内では、マレック病は届け出伝染病です。
【出典】
Malcolm Flanagan
Animal Pharma 2016年5月13日
【監修】
栃木ラボラトリ所長 美馬 一行
【訳】
社長室 小林 千津