学術情報

日本及び海外での鶏アデノウイルス感染症の発生状況の調査報告

 

始めに

2009年から2010年にかけてブロイラーにおける血清型2型のFAVの感染による封入体肝炎の報告が日本全国(東北、関東、東海、関西、四国、九州地方)で相次ぎました。全国的な発生は沈静化しましたが、2010年以降も鶏アデノウイルス感染症の発生が継続しています。そこで日本及び海外での鶏アデノウイルス感染症の発症状況を調査しました。2001年からの日本での発生状況を表 1.に、2008年からの海外での発生状況を表 2.にまとめました。

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鶏アデノウイルス感染症

アビアデノウイルス属(Aviadenovirus)のうち鶏から分離されるものを鶏アデノウイルス(FAV)とよび、これによる疾病を総称して鶏アデノウイルス感染症と呼びます。FAVはアデノウイルス科(Adenoviridae)アビアデノウイルス属(グループⅠトリアデノウイルス)に属し、遺伝学的特徴をもとにAからEの5種に分類され12の血清型があることが知られています1)。

鶏アデノウイルス感染症はブロイラーで発生することが多く病変部の核内封入体形成が特徴です。代表的な疾病として封入体肝炎(IBH)、心膜水腫(HPS)、アデノウイルス性筋胃びらん(AGE)があげられるほかに膵炎、呼吸器疾患、産卵・卵質低下などの症状に関連しているという報告があります1)。これらの疾病のうちのいくつかはFAVの血清型に特異的であることが知られており、封入体肝炎発症鶏からはFAV血清型2型、心膜水腫発症鶏からは4型、アデノウイルス性筋胃びらん発症鶏からは筋胃病変部から1型もしくは8型のウイルスが分離されることが多く報告されています。

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日本での発生状況について

日本での鶏アデノウイルス感染症は主にブロイラーでの封入体肝炎や筋胃びらん、心膜水腫などの臓器病変や軽度の致死率を特徴としていました。鶏アデノウイルス感染症を発症したブロイラーからは血清型1型や2型、8型のFAVが多く分離されました。またレイヤーでも筋胃びらんを主症状とする血清型1型のFAV感染症例が報告されました。そのほかにも鶏貧血ウイルス感染症(CAV)や伝染性気管支炎(IB)といったウイルス感染症、大腸菌やコクシジウム等の細菌感染症との複合感染により顕著な死亡羽数の上昇が見られた例も報告されました3),10),28),29),45),48),49)。2001年から2014年までの日本での発生状況を表 1.にまとめました。

 

表1. 日本でのFAVの発生報告のまとめ

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海外での発生状況について

海外での発生状況を表2.に示しました。米国やブラジル、EU、インドといった世界的に養鶏業が盛んな国での鶏アデノウイルス感染症の発生が多く確認され、海外においてもFAVが広く浸潤していることが示唆されました。海外での鶏アデノウイルス感染症による主症状は日本と同じ封入体肝炎でした。日本では封入体肝炎の鶏から2型が主に分離されていましたが、海外の症例では8型や日本ではあまり分離されていない4型が分離されております。鶏種に関してはほとんどの報告ではブロイラーでの感染の報告でしたが、韓国やブラジルでもブロイラーだけでなくレイヤーにおいての報告もなされております。2008年からの2014までの海外での発生状況を表 2.にまとめました。

 

表2.  世界でのFAVの発生報告のまとめ

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【参考文献】
詳細はこちら

【報告者】
新技術開発統括部 池田 剛


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