鶏用ワクチンの正しい使い方 (マレック病凍結生ワクチンについて)
- ● 決められた日にワクチンを接種していますか?
ワクチンの中には接種日齢が決められているものがあります。マレック病ワクチンは初生時に接種するように決められています。この日齢を大幅に変えるとワクチンの効果が失われることがあります。指定されるものでは、その日齢で使いましょう。
- ● ワクチンの接種時期を遅らせていませんか?
マレック病ワクチンでは初生時に接種するようになっていますが、これは野外の強毒ウイルスに感染する前に、ワクチン株が体の中で増えていることが必要なためです。初生時から日齢が進めば進むほどワクチン効果は減ってきます。必ず初生時に接種しましょう。
- ● ブロイラーにマレック病ワクチンはいらないと考えていませんか?
マレック病は初生ひなの時に感染し、ゆっくり病状が進む慢性の病気です。ブロイラーの出荷時すでに癌のできているものがかなりおります。マレック病ワクチンを接種したものでは増体がよく、飼料効率もよくなります。ワクチンは積極的に使用し経済効果を高めましょう。
- ● 保存用コンテナーの液体窒素をきらしたことはありませんか?
マレック病の凍結ワクチンは、液体窒素がきれて自然の状態で溶けるとワクチン株の大部分は死滅してしまいます。このため一度溶けたワクチンを再度凍らせて保存しても、ワクチンとして効果がなくなります。液体窒素は絶やさないように十分に補充して下さい。
- ● ワクチン接種時に使用説明書は読んでいますか?
ワクチンの中には、そのワクチンに特有な使い方をするものがあります。また最も効果の出る使い方が書かれています。ワクチンを接種するときには、その都度必ず読んでから作業の段取りをつけて下さい。
- ● ワクチンを冷やしすぎていませんか?
ワクチンの保存には適温があります。不活化ワクチンとか溶解用液を凍結させると変質を起こし、効果がなくなったり内容物が析出(小さな塊とか糸くずのようなものが出てくる)したりするものがあります。決められた温度で保存してください。
- ● 接種を予定した羽数分のワクチンを一度に準備していませんか?
鶏に免疫を与えるためにはワクチン株の最小限の量が必要です。生ワクチンでは、溶解後すぐからワクチン株が死にはじめます。ワクチン溶解後時間がたてば、免疫を与えられなくなる位のウイルス量にまで減ってきます。ワクチンは溶解したら、できるだけ早く接種するように計画して下さい。
- ● 凍結ワクチンが融けない程度に室温に置いたことはありませんか?
凍結ワクチンは温度に敏感です。融けない程度に室温に置いても、ワクチン株に死ぬものが出てきます。コンテナーの外に出す時間はできるだけ短い時間にして下さい。
- ● 凍結ワクチンを激しく振りながら溶かしていませんか?
乾燥生ワクチンでは速く完全に溶かすため激しく振ります。しかし、凍結ワクチンではあまり強く振ると細胞が傷み、中に入っているワクチン株が弱かったり、死んだりします。ワクチンにより溶かし方が違うので注意して下さい。
- ● 使い残りのマレック病ワクチンを再度凍結し保存していませんか?
マレック病の凍結ワクチンは、使用説明書通りに融かしても、一度だけならワクチン株が死なないように工夫されています。融かしたまま放置したワクチンとか、溶解用液で薄めたワクチン株は、二度目の凍結には絶えられず死滅します。ワクチンは必要な量だけを調整するようにしましょう。
- ● ワクチン接種のストレスは小さいと考えていませんか?
ワクチン接種は鶏にとって大きなストレスになります。特に切れない注射針の使用、取り扱いが乱暴な場合には一段とストレスは強まるでしょう。例えば初生ひなにマレック病ワクチンを接種した後5~10分間経っても雌雄鑑別ができないくらいのショックを受け、体をこわばらせています。鶏の取り扱いには慎重にしたいものです。
- ● 隔離育すうはワクチン効果に関係ないと考えていませんか?
病原体のたくさん集まっている中、大すうとか成鶏舎のそばでひなを飼育すると、早くから大量の病原体にさらされるため、病気になるものが増えてきます。このようなひなにワクチンを接種しても効果をあげることができなくなります。ひなの時代は他の鶏群から隔離して飼育しましょう。
- ● 農場によってワクチンの効果に差がありませんか?
ワクチンの効果は農場の汚染状態によって差が出てきます。ことにマレック病ワクチンでは初生ひなに接種しますが、汚れた農場では免疫のできる前に感染が起こり、発病するものも多くなってきます。環境はできるだけきれいにして、ワクチンの効果をあげるようにして下さい。
- ● ワクチン接種後にマレック病が出たことはありませんか?
マレック病が多発するのは環境汚染が激しく、ワクチン効果の現れる前に感染を起こしているからです。このような農場ではワクチン接種していない鶏群では、接種したものよりもかなり多数発病するはずです。ワクチン接種と同時に環境も整備しましょう。
- ● ワクチンを変えたところ育成率が上がったことはありませんか?
マレック病ワクチンのAをBにかえたところ、Aの育成率よりもよくなることがあります。マレック病ワクチンの効果は接種群と接種しない群との比較で計算され、接種群AとBだけの比較では判定できません。育成率がよくなったのはワクチンが原因ではなく、感染したウイルスの毒力の差によってできたものです。ワクチンをかえるよりも飼育環境の整備を慎重にしましょう。
- ● 鶏をこんな病気にかからせたことはありませんか?
鶏が3週齢以内に伝染性ファブリキウス嚢病(ガンボロ病)にかかると、免疫産生力が長い間なくなったり、低くなったりして、ワクチンを接種しても効果があがらなくなります。また病気に対する抵抗力も弱まります。その他マレック病、白血病、細網内皮症などの慢性、消耗性の病気にかかるとよい免疫が得られなくなります。これらの病気にかからせないようにしましょう。
- ● 死んだ鶏を無駄に捨てていませんか?
農場に起こる病気の発生状況については、その病気を予防するために重要な手がかりを与えてくれるものです。病鶏について発病日齢、発生と発病状況、処置など、できるだけ詳しく記録しておくと後日参考になります。ワクチン接種プログラムを作るうえでも大切な資料となりましょう。
【引用】
旧社団法人動物用生物学的製剤協会
鶏用ワクチンの正しい使い方153章
【参考資料】
栃木ラボラトリ試験 1984年、1998年、2006年